2018年度中條2年セミナー
「2018年度 東京都議会議員の政治的態度と行動調査」分析結果
学生論文
- 「属性と政治家の関係」
議員の年齢と政策の関係に取り組む本稿は、税負担の多い年代と代議士の平均年齢にずれがあることからスタートする。そして、議員は自分の社会的属性に近い市民を重視する政策を推す傾向があるという仮説をたて、都議会議員を対象に分析を行う。ところが、分析の結果この仮説は支持されない。つまり、「政策においてどの年代を重視するかという点に関して、議員自身の属性は明らかな関連がない」のである。この結果から、本論文は、議員は「自分の属性に関する政策に特化しているという傾向にはないこと、つまり幅広い政策関心を持っている可能性を指摘」する。
- 「東京都の防災対策に対する東京都議会議員の態度の決定要因」
近年東京においては豪雨や落雷などによる被害が多い。これら災害に対して、東京都は様々な防災対策を練っているが、都議会議員の立場からこの防災対策はどのように見えているのだろうか。本稿は、この態度を決定するのは所属会派とイデオロギーであると仮説をたてる。分析の結果、イデオロギーはハード面における防災対策に影響を与えており、ハザードマップ作製といったソフト面での防災対策を含めれば、知事への評価が都議会議員たちのこれら防災政策への態度に影響を与えていることがわかった。本稿の結論は「首長への評価が高いほど、政策に対する好感度・満足度が高い」ということになる。一見当然の結論であるが、首長に対する総合的な評価で個々の政策を評価してしまう危険性も指摘している。
- 「都議会におけるジェンダー・ファクター」
女性活躍推進法が成立したにも関わらず依然女性議員の割合が少ない都議会においては、性別による不公平が生じるような制度や性差別があるのだろうか。本稿の分析によれば、現在の都議会においては、性別による不公平が生じるような制度が存在していると感じるのは、年齢が若く、女性である議員に多い傾向がある。また、都議会の様々な活動において、議員自身が性別による不公平感をおぼえたり、あるいは他の都議会議員が性別による不公平を感じているのを見聞きしたことは少なからずある。本稿は日本社会が男女平等になるには簡単ではないことを示唆している。
- 「関東大震災朝鮮人犠牲者への追悼をめぐる態度の決定要因」
本稿は、東京都が関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典への「追悼の辞」の送付とりやめるという決定に対する都議会議員の態度はどのように決まるのかを明らかにする。分析の結果、この政策決定への賛否は、都知事への評価や議員個々人のイデオロギーよりも所属会派の影響が大きいことを発見する。歴史観においては会派の影響力が強いという結果は、関東大震災から100年近くたち、様々な問題を解決していく東京都議会において意外な結果である。
- 「都議会議員のパートナーシップ制度における政策態度と保革イデオロギー」
本稿は、パートナーシップ制度への賛否とイデオロギーの関係に着目する。先行研究でもイデオロギーの政策態度に対する規定力の強さは明らかであるが、本稿も、イデオロギーはパートナーシップ制度そして選択的夫婦別姓制度に対する賛否に強い影響を与えていることが確かめる。ここから、本稿は、政策実現を求める有権者は投票のさいに候補者のイデオロギーを判断材料とすべきではないかと指摘する。
- 「都議会議員の活動において重要視される要素とは」
都議会議員が議員活動を行うにあたってのリソースにはどのようなものがあるか。本稿では、会派、当選回数、学歴をとりあげ、これらリソースが実際に議員たちにどのくらい重要視されているかを分析する。結果、議員たちに一番重要視されているのは会派であること、大きな会派においては当選回数も重要視される傾向にあること、都民ファーストにおいては学歴を重要視する傾向にあること、が明らかになった。この結果は、大きな会派における当選回数の多い議員が都議会において強い影響力を持つことを示唆し、実際の議員たちの理解に沿うものであろう。
- 「都議会議員における選択的夫婦別姓に対する保守性」
本稿は、選択的夫婦別姓制度の導入に対する賛否と、年齢、婚姻の有無、イデオロギーが関係すると仮説をたてる。分析の結果、選択的夫婦別姓制度の導入への賛否はイデオロギーによって強く規定されることがわかる。本稿はさらに、地方自治体における選択的夫婦別姓制度の導入が世論を動かす可能性も指摘する。
- 「都議会議員選挙において得票率に影響を与える要因」
どんな候補が選挙でより票を得るのか。本稿は、都議会議員の得票率のばらつきを説明しようと試みる。先行研究によれば、地方議会選挙では国政レベルの選挙に比べ、政党・会派よりも候補者個人が重視される傾向にある。そこで、候補者の属性が得票率に与える影響を分析したところ、影響を与えるのは性別と婚姻の有無であった。つまり、女性よりも男性、既婚者よりも未婚者の方が、得票率が高い傾向にある。現在の日本では女性の社会進出が推進されているが、少なくとも都議会議員においては男性の方が得票しやすいという傾向がある。