2019年度中條2年セミナー
「2019年度 東京都議会議員の政治的態度と行動調査」分析結果
学生論文
- 「都議会議員選挙における得票率と議員の社会問題に対する態度の関係」
社会問題に敏感な議員は有権者に選ばれやすいのだろうか。本稿はこのような研究疑問をもち、都議会議員の得票率と社会問題に対する態度の関係を分析する。取り上げた社会問題は、煽り運転規制への賛否、東京防災ブックへの満足度、働き方改革への評価、外国人労働者受け入れへの態度である。分析の結果、確かにこれら問題への態度は得票率と関係が見られるものの、会派や選挙区定数などの変数をコントロールすると、社会問題に対する態度は得票率に有意な影響を与えないと結論づけている。
- 「都議会議員の当選順位に影響を与える要因」
どのような議員が当選しやすいのだろうか。また、どのような選挙ポスターが候補者の当選順位を上げるのだろうか。本稿は所属会派のほかSNSの活用度や都民の意見への注意が当選順位に影響を与えると仮説を立てる。分析の結果、会派とりわけ都民ファーストの会所属であることが当選順位に強い影響を与えており、SNS活用度や都民の意見への注意は当選順位に影響を与えない。また、選挙ポスター作成時に笑顔を気にかけた候補ほど当選順位が上がるという分析結果も報告している。選挙ポスターにおける笑顔の重要度は先行研究においても指摘されているが、本稿の結果もそれに沿うものとなっている。
- 「都議会議員の働く環境は変化しているのか」
都議会において働き方改革は進んでいるのだろうか。本研究は働き方改革に対する議員の態度と議員の所属会派・年齢・性別等属性の関係を検証する。分析の結果、都議会議員は報酬に対する満足度が与党議員である都民ファーストの会議員と野党である共産党議員の間で有意な差が存在し、都民ファーストの会所属議員は報酬が見合わないと感じている。労働時間や女性の働きやすさに関しては、議員の属性による違いが見られない。ただ、年齢が高い議員ほど、都議会では女性が働きやすいと感じていることから、女性の働きやすさに関しては世代間の違いが見られる。
- 「東京都の外国人労働者受け入れの政策決定要因」
本稿は少子高齢化に伴う労働力不足から外国人労働者受け入れという議論の流れに着目し、都議会議員の外国人労働者受け入れに対する意識の差をイデオロギー や年齢、性別等の属性によって説明を試みる。分析の結果、外国人労働者の受け入れに関する政策を重要視するのはリベラルな議員であり、年齢や所属会派による影響は見られない。
- 「日本語指導を必要とする児童生徒への支援に対する都議会議員の態度について」
本稿は、在留外国人の増加に伴って日本語指導を必要とする児童生徒も増加している教育現場の問題を取り上げる。とりわけ、都議会議員が望ましいと考える、公共団体と民間団体それぞれの日本語指導教育負担割合を、議員のイデオロギー や所属会派によって説明することを試みる。仮説は、日本語指導を必要とする児童生徒へのサポートに伴う財政支出は行政が多く負担するべきと考える傾向にあるのはリベラルな議員、民間団体が多く負担するべきと考える傾向にあるのは保守的な議員である。分析結果はこの仮説を支持している。とりわけ、各会派を独立変数として分析した結果から、公明党所属議員の態度はどの会派の議員の態度とも有意な差を持っておらず、公明党の要政党としての性格をよく表している。
- 「東京都の防災対策の満足度の決定要因」
近年増えつつある自然災害に対して、東京都議会議員の間でも認識の差はあるのだろうか。本稿は都議会議員の所属会派や選出区の特徴によって、これら自然災害に対する認識に差が出ると仮説を立てて検証する。分析の結果、当然ながら知事与党である都民ファーストの会所属議員は東京都の防災対策に対する満足度が高い傾向にある。また、23区内選出議員も防災対策に対する満足度が23区外選出議員に比較すると高い傾向にあり、選出区の災害危険度の影響と考えられる。