2023年度中條2年セミナー
「2023年度 東京都議会議員の政治的態度と行動調査」分析結果
学生論文
- 「都議会議員の重視する選挙活動」
選挙活動において演説会や街頭演説そして選挙カーなど音声としての「声」を直接届ける活動を重視する議員は、当選回数が多いという特徴がある。また、選挙活動におけるSNSの効果を高く評価する議員ほど、有権者の前で「声」を直接届ける活動の重視度は下がるという傾向が見られ、選挙活動における「声」と「SNS」の重視度は反比例の関係にある。
- 「東京都有権者及び東京都議会議員における街宣車の評価」
街宣車、いわゆる選挙カーは近年騒音問題化している。選挙カーを評価する有権者は投票に意欲的であり、年齢に関しては予想に反して30代から50代の有権者が選挙カーと評価するという傾向がある。一方、選挙カーを評価する議員は、共産党所属、SNSの評価が低い、年齢が上、という特徴がある。つまり、少数会派であり、SNSを使った活動を行わない議員は選挙カーの存在に意義を見出している。選挙カーの騒音問題は認識されているものの、その存在は投票に関心がある有権者と少数会派でありSNS戦略をとらない議員に支持されていると言える。
- 「議員のコロナ対策意識と都全体の対策への評価の関係」
東京都の新型コロナウイルス対策を評価する議員とは、所属会派が知事与党である都民ファーストの会所属、そして国政政権与党である自民党と公明党所属という特徴がある。会派の規定力は大きく、個々の議員の問題意識や自身のコロナウイルス対策という経験は、政策評価にほとんど影響を与えていない。
- 「女性議員を増やすための施策に対する都議会議員の評価」
都議会においては女性議員が3割を占めているが、女性議員割合を増やすために何らかの施策を講じるべきか。有権者においては、仮説通り、女性、年齢が上、政治の場で「男性の方が優遇されている」と考える人ほど対策を必要とする傾向がある。一方、議員においては、これらの属性は態度に影響しない。つまり、議員においては「女性議員を増やすための施策を講じるべきか」は特定の属性や会派に影響されるわけではない。このことは、議員という政治エリートが自身の属性に縛られない政策決定を行っていることを示唆するかもしれない。
- 「都知事評価は何によって決まるのか」
東京都知事に対する都議会議員の評価は10段階のうち0から10までばらつきがある。東京都知事の仕事ぶり評価を決定するのは、会派(知事与党である都民ファーストの会、国政与党である自民党と公明党)、そして女性、若年層という属性も関連する。つまり、会派や他の属性をコントロールしても、女性議員は都知事の仕事ぶりを評価する傾向がある。
- 「育児休暇制度と議員の関係」
議員における育児休暇制度の導入は難しい問題である。現行制度上、都議会における育児休暇の取得しやすさは議員の属性によって決まらないことが分析結果から言え、問題の複雑さが垣間見える。一方、会派においては都民ファーストの会所属議員に育休を取得しやすいと回答する傾向があり、会派によって育休の考え方が異なる可能性がある。
- 「有権者及び議員の子育て支援政策に対する評価」
東京都の子育て支援「018サポート」に対する有権者の評価は性別とは関係がなく、年齢が上になるほど評価が低くなり、子どもの数が増えるほど評価が高くなるという傾向がある。議員においても、性別は関係なく、年齢が上になるほど評価が低いという傾向がある。また所属会派においては、知事与党(都民ファーストの会)、国政与党(自民党・公明党)のほか、立憲民主党や共産党所属議員も018サポートを高く評価する傾向がある。有権者と議員のいずれにおいても性別が評価に影響を与えず、年齢が若いほど評価する傾向があることは、018サポートの対象を考えれば成功していると言えるのかもしれない。
- 「都議会議員における政党所属の効果の実証」
議員活動において「政党に所属している」ことはメリットもあれば、デメリットもある。政党所属の恩恵を感じる議員の傾向は、性別や当選回数によって決まるわけではない。議員個々人が政党に恩恵を感じるかどうかは、各選挙区における各政党の選挙の戦い方に影響を受けることが分析から示唆される。
- 「政治家の認識する自身の認知度に影響を与える要因」
議員は、どのくらい有権者が自身の活動を認識していると思っているだろうか。自身の活動が有権者に認知されていると思う議員は、SNSが役に立っているという実感のある議員である。つまり、SNSの活用は有権者からの認知度を高めると政治家が考える傾向があると言える。SNS活用によって、政治家が認識する自身の認知度向上、そして政治活性化につながると考えられる。
- 「都議会議員の政策決定とポピュリズム」
大衆迎合的な政策はどのように決定されるだろうか。本稿は、選挙において都民からの支持を得るために、やむを得ず自身の志向とは異なる方向に政策路線を変更することがあるか、を目的変数として分析を行っている。しかしながら分析の結果、特定のパターンを見出すことはできていない。ただ、年齢が統計的有意となっており、年齢が高い議員ほど政策変更において柔軟に対応する傾向があると考えられる。
- 「議員の満足度は何で決まるのか」
都議会における活動や都の政策は有権者において認知度が低い。そして、都議会の深夜に及ぶ開催は議員に大きな負担となっている。現在、議員として受け取っている報酬は仕事内容に見合ったものであるだろうか。分析の結果、年齢が上であるほど、また政党からの恩恵を感じているほど報酬の満足度が高いという結果が得られた。若い議員は仕事内容に比べて報酬が少ないと感じている傾向がある。また、議員が認識する労働環境、活動の積極性、そして有権者からの認知度は満足度に関係がない。
- 「政治とSNS」
SNSを活用し、その効果を感じている議員は若い議員に多い傾向があり、所属会派によって差はない。有権者においても年齢が若いほど政治家のSNSを閲覧している。したがって、今後SNS世代が有権者の大半を占めるようになると、SNSを用いた政治活動が標準となるだろう。